Research[研究]

時間が経っても活きがイイ!
五島伝統の技術を“見える化”

2024.03.01 #水産学部
上海出身の王曜准教授。「五島で獲れた魚の刺身を初めて食べた時は、美味しくて感動しました。私たちの研究が、五島〆鮮魚のより高い評価につながれば嬉しいですね」。

水揚げされた魚は素早く〆ることで鮮度が長続きする、ということをご存じの方も多いと思います。
2021年、本学の水産学部と五島市は、「五島〆」に関する共同研究をスタートしました。
五島〆とは、先祖代々五島の漁師に受け継がれてきた、他の方法に比べより長く鮮度を保つと言われている技術。
本学の最新研究を導入し、この技術の“見える化”に取り組んでいます。
王曜准教授のお話です。

「五島列島は、世界でも有数の大陸棚が広がる東シナ海に浮かんでいます。対馬暖流の真ん中にも位置しており、豊かな漁場で獲れる魚は、関西や関東の市場で高く評価されています。 しかし、長崎の魚市場を経由してから全国へ出荷されるため、博多に近い壱岐や対馬で獲れた魚に比べて、輸送時間やコスト増などデメリットも少なくありません。 また、1993年には五島市に2751人いた漁業者が、漁獲量の減少や過酷な職場環境などを理由に、2018年には952人と約3割まで減少しています」。

実験道具や機械を持参して現地へ。水揚げ後すぐに処理を行い、K値(化学的生鮮度の指標)などの成分の計測に入ります。実験は早朝から夜中まで続きました。

五島市ではこのような危機的状況を踏まえ、五島産の魚の価値をより高めるために、五島〆に着目。
試験に合格した漁業者のみが、五島〆を行える“五島〆の匠”認定制度を設けたのです。
さらに「地域ブランドとして、五島〆鮮魚の価値をより一層高めるためには、漁業者の高い技術に加えて、最新研究に基づいたエビデンスが不可欠」と王准教授。
研究チームは現地へ足しげく通い、漁業者の皆さんとともに調査・実験を重ね、この五島〆が、長く鮮度を保っていることを明らかにしました。

「天然のイサキ、ブリ、ヒラマサを試料にして実験を行ったところ、五島〆鮮魚を氷蔵することで、白筋と呼ばれる身の部分の透明度が一定期間保たれ、鮮度の低下が抑制されることが分かりました。季節を問わず、生食(刺身)で最長10日、少なくとも1週間は問題なく食べられます。また、処理中に使用する海水の温度を下げることで、魚の品質をさらに保てるのではないかという仮説に基づいた実験も行いました。このように五島〆の効果を数値として明らかにするだけでなく、大学が持つ知見を、先祖代々受け継がれてきた技術のさらなる進化に繋げていきたいと考えています。これからもお互いにアイデアを出し合いながら、 五島〆鮮魚が国内外の市場で拡大するために、科学的な基盤を築くよう努力していきたいと思います」。

漁場に恵まれた優位性を、より一層活かしていくにはどうすべきか。地域を挙げた取り組みに期待が高まっています。

五島〆鮮魚で
離島のハンデを克服!
鮮度や形が良い魚だけに施される「五島〆」。延髄破壊、脱血、神経〆、冷やしこみの順序で行われます。写真は処理後7日目の切り身。血抜きの効果は一目瞭然です。
※脳〆:脱血や神経〆の処理を行わない方法
  • 王曜
    水産学部 海洋物質科学講座 食品栄養学研究室 准教授

    上海海洋大学を卒業後、長崎大学水産・環境科学総合研究科で博士号を取得。上海理工大学で講師を務め、現在は長崎大学水産学部の准教授として活躍しています。