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[全学ヨット部]1953~ 子々川から世界を夢見た先輩たち

サークル 2023/07/03

長崎大学全学ヨット部は1953年の創部から、今年で70周年を迎えました。
今回は学生広報スタッフで現役部員(2022年入学)の私が、1977年に入部され、現在は「琴風会」(ヨット部のOB・OG会)の事務局を務める貝原宗重さんにお話を伺いました。

高田春歌さん(多文化社会学部2年)
貝原さんが入部された当時のヨット部の様子を教えてください。

貝原さん 当時部員は各学年6人前後、計20人程度で、建物は変わりましたが、現在と同じように時津町子々川(ししがわ)の臨海研修所の艇庫で活動していました。練習は主に土日で、土曜日は半日授業があったので午後から、日曜日は朝の9時から17時頃までずっと海上で陸には戻ることなく練習していました。昼食には鯖缶とご飯などをヨットに積んで持っていきました。長期休みの期間中、だいたい年に70~80日くらいは子々川で合宿もしていましたね。

高田さん 現在も毎週土日に子々川で練習しているのは同じですね。練習メニューによっては一日陸に戻らないことも時々ありますが、基本的には昼休憩を挟んでいます。

貝原宗重さん
(1983年医学部卒業)

貝原さんがスナイプ級の主将を務めた1980年に全日本インカレのスナイプ級団体で優勝したことが、艇庫の壁に貼ってある新聞の記事に記されていますよね。

貝原さん それについては色々あるのだけれど、まあ(笑)。
本当は「4位」なんですよ。大会1日目、2日目までは長大はトップだったのです。大会は実は4日間あったのですが、ネットや携帯電話のなかった当時、早とちりした新聞社は順位が決まる前に「優勝」と報じてしまいました。OBも長大が優勝したと思い喜んで長崎で待っていてくれました。その頃OBからは「オリンピックに出なさい」と言われていたので、部員みんなもうちょっと上を目指したかったですね。気持ちは、日本国内ではなく世界に向いていました。

高田さん 「幻の優勝」と呼ばれていた理由を現役部員の自分も初めて知りました!

昭和55年の新聞記事
たしかに「優勝」の文字が!
当時の写真(貝原さん提供)
部室にあるたくさんのトロフィー
海上安全のお守りもたくさん
とても高いモチベーションをもって活動されていたことが伺えますが、練習がきついと感じることはなかったのでしょうか?

貝原さん そりゃあ、1年生の頃はもう泣いていました。風の強い日は操船が難しいので川沿いの林が揺れているのを見るのも嫌で。それでもみんなヨットが好きだし、子々川が好きなのでしょうね。ほっとする、すごく良い環境。加えて艇庫があって寝泊まりもできる施設のある大学はそうそうありません。遠方にいるOBも、長崎に来た際には子々川に立ち寄って海を見て帰るそうです。

子々川臨海研修所(外観)
目の前に広がる大村湾
当時の写真(貝原さん提供)
当時のヤシの木も大きく成長
当時のヨット部の慣例行事などについても教えてください。

貝原さん 毎年、夏の合宿中には2泊3日の大村湾1周クルージングをしていました。1泊目は大村、2泊目は西海橋までヨットで行ってみんなで泳いだり、キャンプをしたりしていました。年末には研修所の向かいのお家の方から杵や臼をお借りして餅つきをして、一年の練習納めとするのが恒例でした。またかつて大村湾にあったNBCハーバーを利用して、現在の長崎総合科学大学や長崎市内の各高校のヨット部と合同で練習することもありました。
そして今とは異なる点のひとつが、期間を決めて部全体でアルバイトをして活動費を集めていたことです。長崎各地で建設業のアルバイトをして、セール(帆)の購入費用に充てたりしました。

高田さん 私たちも今年からコロナ禍の制限が緩和されて、伝統だった新入生歓迎会とOBとの交流会を兼ねた子々川でのBBQを復活させることができました。これから現役部員はもちろん、OBや色んな方と子々川でヨットを楽しめる機会を増やしていきたいです。


最後に、現役部員、そしてこれからの長崎大学全学ヨット部へのメッセージをお願いします。

貝原さん 現在約240人のOBがヨット部の活動を支援していますが、もちろん主体は学生です。クラブの運営を自分たちでどうするか、というのは社会に出てからも役に立つ最も大事な経験です。試合で勝つこと以上に、クラブ運営の中で成長していくことが大事だと思っています。ヨットは他の部活と違って荒海に出る上に、遠征、整備、資金の工面など様々な苦労もあります。楽しいのも大事だけど、苦しめば苦しむほど、自分にとって良い経験になります。OBとしてはこれからも長生きして、みんなで支えていきましょうという気持ちです。それに現役が応えてくれたら嬉しいですが。目標を大きく持って、頑張ってほしいです。

OBの方が技術指導や艇の修繕にあたってくださっています。
今年2月には新艇(写真上)を寄贈していただきました。
子々川での練習風景
学生広報スタッフ 高田 春歌さんより

今回、現役部員でありながら学生広報スタッフとして取材をさせていただきました。普段の活動中にはなかなか聞く機会がなかった部の歴史やOBの方々の想いを知り、部への、そして「子々川」という場所への思い入れもさらに強まりました。これからも海とヨットを通して出会えた人への感謝を忘れず、少しずつでも成長して結果を出せるよう、日々の練習に取り組んでいきたいと思います。

長崎大学ヨット部

創業年:1953年(昭和28年)
部員数:26人
活動日:
土・日 9:00~18:00(時津市子々川)
木 18:30~20:00(長崎市営陸上競技場)

※この記事は学生広報スタッフが執筆しました。

1年生が加わって賑やかになった現役部員。
練習にも力が入ります。