Feature[特集]

環境負荷の少ない物質を精密調査

特集 2023/04/26

私たちの生活になくてはならないエアコンですが、地球温暖化への影響も注目されています。
機械工学コースの近藤智恵子教授は、エアコンの心臓部であるヒートポンプ内で血液のようにエネルギーを輸送する作動流体について研究しています。
「物質の性質によって、温暖化に及ぼす影響は異なります。私の研究室では、より少ないエネルギー消費で高い温度調節効果を得られる作動流体を研究しています。温度は上げるよりも下げる方が多くのエネルギーを必要とします。エアコンだけではなく、例えば食品の保存や半導体の製造、医薬品の輸送の際にも冷やす技術は必要で、目に見えない場所でたくさんのエネルギーが消費されています。温暖化の進行を元に戻すのは難しいですが、少しでも緩和するために世界中の研究者と協力しています」。

どのような研究活動を行っているのでしょうか

「さまざまな物質を精密測定し、作動流体として適した性質を探っていきます。実験装置は学生が中心となって部品を組み合わせたものです。細かな部分に粗が目立ちますが(笑)、測定結果の精度はトップクラスで、実際に計測した値が世界的標準データとして収録されたこともあります。すごいことをしているんだよと学生に話すんですけど、どうも実惑がないのか、反応は薄いですね。ただ私としては、難しいことを難しいと学生に思わせないことも大事だと思っています」。

研究室はとても和やかですね

「私があまり先生らしくないせいもあって、自由な学生ばかりです。でも真面目に研究をコツコツ進めてくれて、先輩が後輩の面倒を見る良い関係性が自然とできています。新しい研究をする中で、失敗はつきものです。そこで悩むことも大切ですが、嫌になって投げ出すのはもったいないですよね。互いに励まし合いながら、楽しく研究を進められたらと思います」。

近藤研究室で学ぶ学生達。大学院へ進んで研究を継続する学生が多く、互いに気心が知れた仲。 近藤先生曰く、のほほんとした穏やかな学生が多いそう。
研究指導は細かいデータの扱い方が中心で、あくまで学生のペースを尊重。時には一緒に悩みながら、試行錯誤を繰り返していきます。

近藤先生は大学院を卒業後、一度は企業に就職したそうですね

「エアコンの設計開発部門に所属していました。自分が携わった商品で多くの人が快適に過ごせるというやりがいはありましたが、誰も知らないことを知りたいという気持ちの方が強くなり、研究者の道に進みました。研究室の学生にも、新しい発見をする楽しさを感じてほしいです」。

近藤 智恵子 教授 / KONDO Chieko

同志社大学工学研究科修了後、日立アプライアンス株式会社入社。九州大学総合理工学府博士課程修了。退社後、イリノイ大学機械工学部客員教授。九州大学特任助教を経て長崎大学工学部准教授に着任。2019年度より現職

担当講義

熱力学Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ(工学2年) / 伝熱学(工学3年)

近藤先生から一言

一つの実験に数か月かかることも珍しくなく、何度も測定を繰り返すのは根気のいる作業です。だからこそ、適度に息抜きしながら、みんなで気軽に意見を交わして試行錯誤できる研究室の雰囲気が重要だと思います。