Feature[特集]

職場内のコミュニケーションを分析する

特集 2023/04/24

職場のコミュニケーションにおける問題を経営学的に分析し解決策を導き出すのが、辺見英貴助教の研究内容。
会議の場で上司に意見しづらい。特定のメンバーだけで話し合いが進む。そんな誰しも思い当たる経験がテーマとなります。
「専門は組織行動論という研究分野で、主に企業におけるコミュニケーション、その中でも上司と部下の関係性や発言に着目しています。経営と聞くと、お金や数字が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、組織内での人の動きや連携は非常に重要な要素です。いわゆる空気を読んだ発言ばかりする職場や、水を差す発言ばかりする職場は、果たして健全な状態でしょうか。円滑なコミュニケーションや働きやすい関係性が、企業の利益にもつながります」。

企業だけではなく、いろいろな組織に応用できそうな研究内容ですね。

「学生の場合、サークルの先輩や、アルバイト先の社会人との関係に置き換えるとイメージしやすいと思います。私自身、大学時代のゼミやサークルの話し合いの楊で、同じ人ばかり発言する状況に違和感を覚えた経験が、組織行動論に興味を持つきっかけとなりました。まだ直接的に講義で取り上げる機会は少ないですが、学生が具体的にイメージしやすい例を用いて解説するよう心掛けています」。

コロナ禍でリモートワークやオンライン会議が普及しましたが、社内のコミュニケーションに及ぼす影響はいかがですか。

「非対面の会話が増える中で、これまで何気ない雑談の中で打ち明けることができた悩みを、なかなか表に出せないケースがあります。在宅勤務が続くと、企業という組織に所属する意味を見失いがちで、上司と部下の関係性も希薄になる可能性があります。新たな研究テーマとして今後取り組みたいです」。

実際に企業の話し合いの場に参加するなどして、どのようなコミュニケーションが行われているのかを調査。インタビューやアンケートを駆使して異なる立場の社員がそれぞれどんな課題を感じているのかを探っていきます。「長崎には老舗企業が数多くあるので、今後はその特徴を捉えた分析ができればと思います。」と辺見先生


この春からはご自身のゼミ生を担当されるそうですが、どんなゼミ活動を予定していますか。

「実際に長崎の企業と連携しながら、組織内のコミュニケーションについて質的な分析を進めていく予定です。ゼミ活動の中で、メンパー同士がうまくいかず、時には衝突するようなトラブルが起こったりすることもあると思います。それ自体がある意味では狙いというか。ゼミという組織の中で、コミュニケーションの課題をどう解決していくのか、学生と一緒に考えていきたいです」。

辺見 英貴 助教 / HEMMI Hidetaka

北海学園大学経営学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了。博士(経営学)
2021年より現職

担当講義

企業論A(経済2・3年)/企業論特論(経済学研究科博士前期課程1・2年)/
企業論B(経済2・3年)/中小企業論(経済3・4年)

辺見先生より一言

コミュニケーションの課題は、人の相性や性格のみに左右されると考えがちです。いったんそこから離れて、組織行動論としてアカデミックに分析することが、新たな解決方法を導きだすことにつながります。