Feature[特集]

歯周病菌のメカニズムを探究する

特集 2023/04/21

医歯薬総合研究科の佐藤 敬子 准教授は、フロンティア口腔外科分野に所属。
数ある徴生物の中でも歯周病菌について研究しています。「歯周病は世界中に蔓延していて、感染者数の多い病気として知られています。私たちの口の中にはおよそ五百ー七百種類もの菌が存在し、そのうちどの歯が歯周病の原因となるのかはある程度判明しています。ただし詳しいメカニズムはまだ分かっておらず、菌が体に害を及ぽす物質をどのように生み出すのか、その仕組みを私は調べています。

歯学部と聞くと、将来は歯科医師へと進む方が多いイメージですが

先生はもともと研究職を目指していたのでしょうか。
「それがまったく考えていなくて、大学時代も基礎講座より臨床実習を好んでいましたね。ただ、勤務医として長期間働く前に何か違うことをしてみようと思い、大学院から研究の道に進んで、今に至ります。研究は私の性格にも合っていたんだと思います。自分のやり方がそのまま結果として返ってくる手応えがありますし、研究を続ける中でいろいろな場所に赴いて専門家の方と交流できるので、視野が広がります」。

現在の研究分野を選んだきっかけはありますか。

「もともと小さい生き物に興味がありました。最初は徴生物の中でも単細胞なら割と自由に何でもできるんじゃないかと甘く考えていたんです。それが実際に研究を進めると、非常に複雑な仕組みで一筋縄ではいきません。一つの細胞で生き残り、分裂して遺伝情報をつないで、環境の変化にも適応する。調べるほど奥の深い生物だと感じました」。

写真左:プレパラート上のサンプルをチェックして、実験の準備を行います。サンプルは染色した上で顕微鏡で検査してデータを分析します。
写真右下:顕微鏡を使って微生物を調べて、その病原因子を分析します。「実験に必要な時間はさまざまですけど、何時間も地道に作業することが珍しくありません」と佐藤先生

学生に指導する上で心掛けていることを教えてください。

「研究作業の中で、最初に興味を持った作業を一つ身に付けてもらうようにしています。生物の培養や遺伝子操作を行うのが好きな学生もいれば、顕微鏡などの機器を使うのが好きな学生もいます。
何か―つでも好きな作業があることで、学内や学会で発表したり、他の人の発表に興味を持ったり、それをきっかけに興味が広がってくれると良いなと思います。私はそのお手伝いをしたいと考えています」。

佐藤 啓子 准教授 / SATO Keiko

九州大学歯学部を卒業後、臨床講座に所属。歯科医院にて勤務。その後、長崎大学歯学部大学院を修了。愛知学院大学歯学部微生物学講座、長崎大学口腔病原微生物学講座を経て現在に至る。

担当講義

口腔生化学(歯学部3年)/細胞生物学入門(歯学部1年)

佐藤先生から一言

好奇心を原動力に、何度も試行錯誤を繰り返せるのが研究の面白さです。さまざまな講義を受けながら、自分の興味の持てる分野を見つけましょう。