Research[研究]
本稿は2025年1月16日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿(日清紡マイクロデバイス株式会社)を再編集したものです。
音と半導体の深い関係
昔も今も私たちは、さまざまな音(波)がある社会で暮らしています。人の会話、動物の鳴き声に加え、トイレやキッチンなどの水回り、PCやスマートフォンなどのIT機器、テレビ、エアコンなどの家電機器、自動車、船などのモビリティ。実はこのような音の出るものは、半導体と深い関係があります。
例えば、スマートフォンやコンピューターの中には、音声をデジタル信号に変換し、処理するための半導体チップが組み込まれており、高品質な音声通話や音楽再生が可能となります。また、ノイズキャンセリング機能を持つヘッドホンやスピーカーも、半導体技術を利用して外部の雑音を効果的に除去し、クリアな音質を実現しているのです。
この音声などのアナログ信号を電子信号に変換処理するための半導体は「アナログ半導体」と呼ばれ、日清紡マイクロデバイスではこの技術を強みとしています。
社会を支えるアナログ半導体
昨今は、さまざまな産業分野でもアナログ半導体が活躍しています。工場・産業機器では、製品や製造装置の状態の良しあしをマイクで音を収録して人工知能(AI)で判断したり、超音波センサーを使用して製品の内部構造を検査し、欠陥や異常を検出したりすることもできます。これによって熟練者に頼らなくても検査をすることが可能となります。
モビリティ分野では、自動車などの動作時の音を監視して正常か異常を確認し、異常箇所の特定に役立っています。メディカル・ヘルスケア分野においても、妊娠中の胎児の健康状態の確認などに使われる超音波装置では、音波を利用して体内の画像を生成する処理技術を半導体チップが支えています。さらに、半導体技術の進化により、画像の解像度や処理速度が向上し、より正確な診断が可能となっています。また、長崎大学医学部の井上剛教授とは小型の健康モニタリングセンサーの開発にも挑戦しています。

音(波)の発生場所と課題
音の技術で便利でつながる社会を
半導体技術の進化は今後も続き、私たちの生活にさらに変化をもたらすものと思います。例えば、音の半導体技術を使い、身体から出る関節音、心音、呼吸音などを高精度かつ高感度で検出し、AI処理することで、ベテランの医師に頼らなくても正確な診断を行うことや、遠隔での見守りといった自己管理の向上を可能にします。また、測定していることを忘れるほど小型で負荷の少ない人用や動物用のバイタルセンサーが普及すると、これまで治療が困難とされてきた病気の治療に役立つことも期待できます。
このように日清紡マイクロデバイスは、常にアナログ半導体技術を進化させ、通常の人間の耳や目の能力では判別できない高精度な技術によって人間の能力を拡張させ、より安全で安心な社会の創造に役立ちたいと考えています。そしてさらに、人、動物、植物、家電、モビリティ、ロボット、生産機器、天候、仮想空間といったさまざまなものが「つながる社会」を実現し、豊かな社会の実現に努力してまいります。

執筆者情報
日清紡マイクロデバイス株式会社
代表取締役社長
吉岡 圭一(よしおか けいいち)
関連リンク
長崎大学リレー講座特設サイト(日清紡マイクロデバイス株式会社の講演動画配信中 視聴期限2025/3/31まで)