Research[研究]

第4回 新しい知の創出への挑戦

研究 2024/07/18

本稿は2024年7月18日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。

プラネタリーヘルスという目標を掲げて大学の「知」を結集

 「長崎大学では、どのような研究が行われていますか?」この質問にすらすらと答えられる読者の皆さんは、おそらくいないのではないでしょうか。しかし、これは何も本学だけに限ったことではありません。全世界の大学で行われている研究の多くは、一般にはあまり知られていないのが実情です。

 もちろん、本学でも数多くの優れた研究が行われています。しかし、これまでは、大学内にいる私たちでさえ他の先生方の研究内容を十分に理解していませんでした。それが最近、様変わりしつつあります。

 それは、大学独自の目標として、プラネタリーヘルス」の実現を掲げたことです。グローバルヘルス、グローバルリスク、グローバルエコロジーという3領域にまたがる5つのアクションプランを設定し、学部や専門性さらには学内外といった枠組みにとらわれることなく、地球と将来世代のため教職員がお互い協力して新しい「知」の創出に挑戦しています。

CAMRISが進める半導体を軸としたコラボレーション

 そのような状況のなか、昨年11月、長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター(CAMRIS)が誕生しました。本センターは、専任スタッフや自前の研究設備(いわゆる箱物)は持っていません。しかし、それを逆手に取り、本学でこれまで培われてきた研究資源を最大限に活用して「マイクロデバイスの設計・製造・活用に関する連携研究」を積極的に推進しています。

 なかでも「活用」に関する連携研究を掲げたことで、幅広い分野の方々とのコミュニケーションが生まれ、幸いにも、センター設立からの短期間にさまざまな国内・国外企業、自治体、教育研究機関より数多くの問合せをいただき、半導体に関連した多種多様な共同研究契約を結ぶことができました。

 また、学内で先行して共同研究実績がある医工連携や海洋開発などの分野においても、本センターを媒介とした先進的な連携研究を進めようとしています。例えば、海上に浮かべたブイにタービンを取り付け、潮流による発電技術の研究もその一つです。半導体技術を応用して海中のさまざまなデータを収集、発信することを可能にし、今後実用が期待される沖合養殖などへの活用を目指しています。

 今後は、このように環境、インフラ、食糧、エネルギーなどの分野にも積極的に活動を広げ、長崎を中心とした地域への社会貢献はもちろんのこと、本学が目指す「プラネタリーヘルス」を科学的・工学的な視点から実現していきたいと思っています。

シーズとニーズをマッチングするURAの役割

 なお、このような取り組みを円滑に進めるためには、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)の存在は欠かせません。URAとは、大学等の研究機関で、産学連携や補助金申請の支援などに取り組む戦略職員。学内に存在する埋もれた“キラリと光る”研究シーズを発掘し、学外の“研究ニーズ”と上手くマッチングして双方がウィンウィンの関係を築くためには、その分野に精通し産学官連携をコーディネートできる目利きのある人材が必要です。

 本センターにおけるURAの役割や具体的な活動については、次回ご紹介します。お楽しみに。

研究者情報

長崎大学学長補佐

総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター・副センタ―長

大学院総合生産科学研究科共生システム科学コース化学・物質科学分野・教授

兵頭 健生(ひょうどう たけお)

関連リンク

長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター(CAMRIS)

長崎大学大学院総合生産科学研究科