Research[研究]

第2回 研究と教育 産学連携がカギ

研究 2024/05/16

本稿は2024年5月16日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。

そもそも半導体とは?

 半導体は私たちの日常生活に密接に結びついていますが、実際にそれを目にする機会はほとんどありません。しかし、スマートフォン(スマホ)、コンピューター、家電製品、自動車など、私たちが毎日利用している多くの機器には必ずと言っていいほど半導体が使われています。半導体がなければこれらの機器は動かず、現代の生活は営めないといっても過言ではありません。

 なぜこんなに私たちの生活は半導体に頼っているのでしょうか?半導体は、これらの機器を正確に作動させるため、電気をコントロールする役割を担っているのです。私たちは、小学校の理科で乾電池と豆電球をつなぎ明かりをつけるという実験で、金属は電気をよく通し(=導体)、ゴムやガラスなどは電気をほとんど通さない(=絶縁体)ことを学びます。半導体はこの中間の性質を持ち、電気を通したり通さなかったりすることができます。スイッチのオンとオフ(デジタル信号では1と0)を切り替える機能と同じです。

スマホの中を覗いてみよう

 例えばスマホでは、アプリのアイコンをタップすると、ユーチューブを視聴したり、LINE(ライン)やゲームなどができますが、これらは全てスマホの中にある半導体によって実現されています。1と0のデジタル信号を使って高速に計算処理する半導体、データを保存する半導体、インターネットに接続する通信用の半導体、画面のタッチ操作入力を受け付ける半導体など、スマホの中には半導体や電子部品が約1500個使用されています。最新モデルは高速処理用の半導体チップの中にさらに小さい半導体部品が約1平方センチに190億個も入っています。

 10年前のモデルと比較すると約20分の1まで微細化が進んでおり、半導体技術は目覚ましい進歩を遂げています。今後、人工知能(AI)、自動運転、メタバース、さらにはバーチャルトランスフォーメーション(VX)といった私たちの生活のあり方を大きく変える可能性を秘めた革新的技術を実現するのも半導体が基盤となるため、その重要性は増す一方です。

産学連携を軸とした研究と教育

 長崎大学では、2023年11月に総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター「CAMRIS※」(キャムリス)を新設しました。多くの製品は半導体の他に、センサー、バッテリー、コンデンサー、磁気部品、アンテナなどの電子部品が組み合わされることによって動作します。CAMRISではこれらをマイクロデバイスと総称し、長崎大学内外の研究者、学生、産業界と緊密に連携して、これらのより先駆的な設計・製造・活用の研究と、それを担う研究開発志向(トップ)人材の育成を行います。

 そして、CAMRISが属する総合生産科学研究科は、今年4月に発足した情報・工学・環境・水産の自然科学系の研究部門が一体となった組織であり、分野横断的な研究と教育の融合を図る環境が整っています。今後は高専や工業高校とも積極的に連携しながらこの環境を最大限活用して、他にない独創的な取り組みや成果を創出し、長崎県全体での人材育成と半導体関連産業の活性化に貢献していきます。

※CAMRISとは、Center for Advanced Microdevice Research in the Interests of Societyの略です。

研究者情報

長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター長

大学院総合生産科学研究科(工学系)教授

大島 多美子(おおしま たみこ)

関連リンク

長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター(CAMRIS)

長崎大学大学院総合生産科学研究科