Research[研究]

第11回 誇れる魚を“長崎マルシェ”で

研究 2024/02/13

本稿は2024年2月15日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。

長崎経済研究所「ながさき経済 2023年新年号 No.388(通巻No.748)」
日本銀行長崎支店『長崎県の観光産業の現状と課題 – “魅力の宝庫”を“魅力の倉 庫”としないために-』
NBC長崎放送 Pint ウィークリーオピニオン『世界で人気『ブリ』が長崎の水産業の救 世主に!? 迫られる“大転換期”への対応』
NBC長崎放送 Pint ウィークリーオピニオン『ノルウェーサーモンに代わって世界がジ ャパンブリを食べる 『ながさきブルーエコノミー』の課題』

知られていない長崎の魅力

 「“魅力の宝庫”を“魅力の倉庫”としないために」。これは、私が日本銀行長崎支店長時代に公表したリポートの副題です。県外出身者の私が県内各地を回って感じた正直な感想です。長崎には、魅力的な「歴史・文化」、「自然」、「食」などがあります。しかし、それが十分に整理されておらず、提供する力が弱いのもまた事実です。実際、2~3年で転勤する県外企業の支店長・支社長さん達も「長崎は本当に良いところ。食べ物も美味しい。」と長崎ファンになって離任されます。ただ、「長崎の良さが知られていないのがもったいない。」ともおっしゃいます。私もその一人であり、長崎の良さを何とか広め、経済の活性化につなげることはできないかと地縁のない長崎に戻ってきました。

 皆さまが毎日食べている長崎県産の食材は日本、いや世界に誇れるのですが、長崎の方々が控えめなのか、食べ慣れているのか、その価値を十分にアピールできていません。特に「魚」は、大都市で高額なものを食べるより新鮮でおいしいことは各地を経験されている支店長・支社長さん達のお墨付きなのです。

長崎マルシェ構想

 では、どうすれば長崎の誇れる「食」をアピールできるのでしょうか。やはり、長崎の「食」を提供する場を設ける必要があります。それが、ながさきBLUEエコノミー』の主要課題の一つに掲げている“長崎マルシェ”構想なのです。長崎に来る方々に長崎の「食」の良さを実感してもらえれば、国内外への販売の増加にも結び付きます。もちろん、多くの方が利用するためには、街なかなどアクセスの良い場所に設けることが重要です。

 また、「食」を朝や夜に提供できれば宿泊客は増えます。長崎市と函館市を比較すると、夜景がきれいで海産物が豊富であり、路面電車が走っているといった共通点が多いのですが、観光客の宿泊比率をみると、長崎市が4割、函館市は6割です。これは函館の人気観光地である朝市の魅力と無関係ではないでしょう。日帰り客と宿泊客の消費額を比べると、宿泊客の消費額は日帰り客の倍以上となっており、経済効果があることも明白です。

 “長崎マルシェ”で取り扱うものは、ブリに限らず、長崎県の誇れるものを全て並べ、実際に食べていただくことが必要です。営業時間も、朝から夜まで、いつでも長崎の「食」を楽しめることが大切です。金沢市の近江町市場では、朝7時から開店している店舗もあれば、夜23時まで営業している店舗もあります。つまり、朝から晩までどこかの店舗は営業しており、観光客は自らのスケジュールに合わせて北陸の海産物を味わうことができます。九州は観光に力を入れていますが、旅行会社から「海鮮は北海道か北陸で、九州は“肉アイランド”というイメージがある」と伺ったことがあります。九州他県が「肉」なら魚をアピールして長崎に周遊していただくという逆張りの発想もあります。

 いずれにしても、にぎわいのある長崎の「食」の拠点を作ることは『ながさきBLUEエコノミー』の大きな目的のひとつであり、地域経済の活性化のために産官学が連携して取り組むべき優先課題なのです。


研究者情報

長崎自動車取締役(地域戦略担当)
長崎大学海洋未来イノベーション機構連携研究員
長崎市政策顧問(経済再生担当)
長崎県観光連盟政策参与(マーケティング戦略担当)

平家達史(へいけ さとし)

関連リンク

「ながさきBLUEエコノミー」HP

海洋未来イノベーション機構 | 長崎大学 (nagasaki-u.ac.jp)