今年3月、長崎大学フットサル部FORZAが「LUXPERIOR CUP地域大学フットサルチャンピオンリーグ2023-2024(以下、地域大学CL)」で、初の大学日本一を成し遂げました。有名私立大学など主要都市から強豪校が顔を揃えるなか、地方の国立大学チームが繰り広げた快進撃に、OBやサポーターといった学内外の皆様から、たくさんの応援と祝福の声が届きました。
本学ではFORZAを含む、182の大学公認サークルが活動しています。学業、サークル活動、アルバイトとめまぐるしい日々の中で、初めての一人暮らしなど自主性が求められる大学生活。様々な課題をクリアしながら前に進んでいる学生たちにとって、サークル活動はどのような成長を促してくれるのでしょうか。4つのサークルに注目し、それぞれの奮闘する姿と想いをご紹介します。
今年3月、長崎大学フットサル部FORZAが「LUXPERIOR CUP地域大学フットサルチャンピオンリーグ2023-2024(以下、地域大学CL)」で、初の大学日本一を成し遂げました。有名私立大学など主要都市から強豪校が顔を揃えるなか、地方の国立大学チームが繰り広げた快進撃に、OBやサポーターといった学内外の皆様から、たくさんの応援と祝福の声が届きました。
本学ではFORZAを含む、182の大学公認サークルが活動しています。学業、サークル活動、アルバイトとめまぐるしい日々の中で、初めての一人暮らしなど自主性が求められる大学生活。様々な課題をクリアしながら前に進んでいる学生たちにとって、サークル活動はどのような成長を促してくれるのでしょうか。4つのサークルに注目し、それぞれの奮闘する姿と想いをご紹介します。
地方予選敗退と
翌年の大学日本一まさかの
快進撃の裏側
選手間の意思疎通が勝敗を左右します。普段から立場に関係なく要求し合える環境づくりを心がけました。
優勝につながる道を切り開いた4つのチームビジョン
1年前、2023年夏の全日本大学フットサル大会。FORZAは大学日本一を目標に掲げていましたが、結果は九州大会予選敗退。
当時、キャプテンだった加藤遼大さんは、思わぬ結果に大きなプレッシャーを感じていました。
「それまで全国大会には2年連続で進んでいました。日本一になることが目標だったのに、ふたを開けてみればこの結果です。しかも歴代最強と言われた2022年のチームから体制が変わったばかりの頃だったので、キャプテンとして重責を感じていました」。
なぜ負けたのかチームで話し合う場を設けた加藤さん。
「“本気で楽しむ、立場に関係なく要求し合える、謙虚な姿勢で感謝を体現できる、主体的に行動する”。目標達成に向けて組み立てていたこの4つのビジョンをクリアできているのか、メンバーと確認しました。さらに日本一にふさわしい集団になることを目指して、技術面はもちろん食生活など実生活を含めた改善にも意識を向けました」。
その結果、地域大学CLの予選である九州大学リーグを無敗で優勝し、全国大会への出場権を得ます。
さらに、全国大会も順調に勝ち進み、ついに決勝戦へ。
そこで対戦したのが順天堂大学。
実は順天堂大学は、2018年に全国大会に初出場した先輩たちが、初戦で大敗した相手でした。
個人技に長けた順天堂大学、片や守りの長崎大学。
かつて手も足も出なかった宿敵を相手に緊迫した試合展開の中、接戦を繰り広げ、少ないチャンスを確実に得点に繋げた長崎大学は、4対2のスコアで夢のビッグタイトルを掴み取ることができたのです。
「先輩たちの屈辱を果たした意味でも、優勝はもちろん嬉しかったです。でもビジョンの達成に向かって、しっかり努力できたかと言えば完全ではなかったと思います。それは裏を返せば、自分たちにはまだまだ伸びしろがあるということ。FORZAの挑戦はこれからも続きます。僕自身、自分たちの力でチームを創り上げる輪の中心にいれたことが大きな自信になりました」。
現在、新キャプテンを中心に新しいシーズンがスタートしたFORZA。
「今シーズンは、“国立大学の道しるべになる”という新たなミッションを掲げています。僕たち地方の国立大学チームは、私立に比べて選手層や練習環境が整っている訳ではありません。限られた条件の中でどう成果を出していくのか、同じような環境にいる大学生の道しるべになりたいと思います」
プレー中は勝ち負けにとことんこだわる!集中力がアップする秘訣です。
得点王のメンタルコントロール術
地域大学CLで得点王になった土田真平さんは、サッカーからフットサルに転向後、思うようなプレーができず落ち込んでいた時期があったと言います。
「技術の向上には限界があるけれど、メンタルは鍛えられると思いました。大きな大会になればなるほど、持っている力を100%出し切るのは難しい。楽しもうと思っていても上手くいきません。声に出してみるとか笑ってみるとか、良いプレーができた時にはしっかり喜び、まずいプレーをした時はきちんと反省し、プレーを修正することを心がけると、緊張がほぐれてプレーに集中できるようになりました」。
現在、土田さんは大学院で浮体式の洋上風力発電装置が、魚類に及ぼす影響について研究しています。
「海中に漂うウロコや糞などから生物のDNAを検出する、環境DNA技術を駆使した研究です。海水を採取するだけで海中にどんな生物がいるのか調べることができるので、風が強い風車の周りでも短時間で調査が可能です」。
論文の執筆や乗船実験など、研究活動と大事な試合が重なることもあるのでは?「優先すべきは研究なので、船上ではストレスをためないようにフットサルのことは一切忘れます。研究室の仲間も私のフットサルへの思いと活動を理解してくれていたので、サポートしてくれました」。
一つ一つのプレーや目の前のやるべき課題に集中して向き合う。
簡単なことではありません。土田さんの優れたメンタルコントロール術は、チームを優勝に導く一つの要因となり、さらに自分自身の成長にもつながったでしょう。
応援される
チームになるために
SNSは、より多くの人の目に留まる画像を追求。読みやすい文字の配置や色の組み合わせなど研究しました。
初優勝の原動力になった要因の一つに、積極的な広報活動があげられます。
たくさんの応援が大きな力になるからです。
原田拓真さんは、学部3年次からFORZAの広報を担当しています。
「大ケガをして高校生でサッカーを辞めました。サッカーを好きな気持ちはどこかにあったので、大学でフットサルを始めてはみたものの、公式戦では出番が少なく悔しい時期が続き、今の自分に何ができるんだろう、そう考えるようになりました」。
広報担当になったのはその矢先のこと。
原田さんは「広報活動を通して、応援されるチームづくりに貢献しよう」と気持ちを切り替えました。「4年の夏に選手を辞めて、広報に専念したいと監督に伝えました。大学院に進学後もチームに残って広報に打ち込んだのも、大学日本一になるFORZAの姿を見届けたかったからかもしれません」。
ベンチで見守った地域大学CL決勝戦。
原田さんは優勝の瞬間をこう振り返ります。「終了直後は泣きそうになりましたが、決勝報告用に準備していた画像をSNSにアップしなきゃとすぐに我に返りました。嬉し涙も一瞬で引きました」。
ここまで応援してくださった方々に一刻も早くこの吉報を届け、感謝の気持ちを伝えたいのと同時に、優勝という実績を広く発信して、より多くの人の応援や支援を得る、それが広報としてやるべきこと。
フィールドを離れたとしても、チームに貢献できる。自らの決断をやり遂げた原田さんは、間違いなく優勝の立役者の1人なのです。
体が不自由な
人たちを支えるモノづくり
という名の支援
福祉用具作らん場は、2020年創部のまだ若いサークルです。
工学研究科の石松隆和名誉教授の下、障がい者の要望を聞き取り、福祉用具を開発する活動をしています。
部長の加藤亮太さんはご自身も体が弱く、高齢者や障がい者の支援につながる活動を目指して、学部1年の頃に友人とサークルを発足。
声によってイルミネーションが反応するクリスマスツリーや、肘をついた状態で頭が洗える台など様々な要望に応えてきました。
そんななか感じているのは、自分たちがつくる視点と障がいがある方が使いやすいと思う視点にはギャップがあるということ。
加藤さんは「ギャップを埋めながら本当に役立つものを作りたい」と言います。
また、忘れられない出会いと別れもありました。脳腫瘍を患い電動車いすを使用していた女の子のためにスロープを製作。
小学校入学を控えていた女の子が、リビングから屋外へ直接出られるように考えたものでした。
この出会いが、他者に対する深い思いやりが芽生えるきっかけにもなりました。
「出会った頃は病気に関する知識もなく“小さいのに可哀そうだな”としか思いませんでした。半年後にその子は亡くなりました。ご両親は短い期間だったけど、僕たちが作ったスロープをとても喜んでくださいました。今でも命日にはお線香を供えに行きます。障がいがある人の多くは病気が体をむしばむ怖さを深く感じています。今できている生活を維持するために私たちに何ができるのか、ご本人やご家族と交流する時間を増やし、相手の要望を最大限汲み取るよう心がけています」。
呼吸を合わせて前に進むチーム競技が
はぐくむもの
カッターボード(端艇)競技は、船舶の緊急避難時の訓練から派生したスポーツです。
水産学部では、必修講義としてカッターボートを使った海洋訓練が行われていた時代があり、端艇部の部員も水産学部生のみで構成されています。
2023年の新人戦、端艇部は男女アベック優勝という記憶に残る結果を出しました。勝因について、男子部長の和泉匠真さんは次のように語ります。
「同じピッチで漕がなければスピードが落ちてしまう、団結力がものをいうスポーツです。新人戦では1年生12人で漕ぎ手をそろえ、メンバーの仲の良さが際立つ試合になりました。強かった頃の先輩が残してくれたメニューを参考にしながらも、さらに筋力を高める練習などを意識し、それに耐え抜いたことが大きな勝因だったと思います」。
女子部長の染谷茉里さんにも勝因を聞きました。
「分析力の高さです。毎回動画を撮影し、それをもとに分析します。漕ぎ方に正解はないので、お互いの良いところや悪いところを指摘し合える関係も勝因の一つだと思います」。
個の能力だけでは前進しないカッターボード。
そこにはチーム競技の醍醐味があります。「部には監督やコーチがいません。先輩から受け継いできた練習メニューを参考にしながら、海況に合わせた漕ぎ方の研究などメンバー全員で課題をクリアしてきました。先輩たちと一緒に掴み取った賞でもある。そう思っています」。
洋上を舞台に伝統をつなぐ戦いは、強い絆もはぐくんでいます。
書道には地域を元気にする力がある!
全学サッカー部の横断幕や受験生向けの応援メッセージなど、書道部の元には様々な依頼が舞い込んできます。
5月に行われた水産学部学園祭「鴻洋祭」では、晴れ渡った空の下、今年のテーマ“海晴”の文字が完成。
見学に来ていた地域の皆さんから、たくさんの拍手が送られていました。
「練習の成果や広報活動が、ご依頼につながっていると思います。作品を見てもらえることは活動の励みになります」と広報担当の境千晴さん。
今年2月、長崎ランタンフェスティバルに福山雅治さんと仲里依紗さんが登場した際にも、書道部が活躍しました。
JA長崎から依頼を受け、巨大な布製の垂れ幕に書いたお二人へのメッセージが、地元テレビ局のニュースに取り上げられたのです。
書道部の公式Xにもたくさんの反響があったそうです。
「当日の朝、垂れ幕を投稿したところ、たくさんのいいねとリポストをいただきました。ほかにも長崎県庁で行われたイベントなど、学外からご依頼をいただく機会が増えています」。
書道には地域を盛り上げる力がある。活動の場が外へ広がれば広がるほど、新しい気づきと自信を実感している書道部の皆さん。これからも期待に応え地域を盛り上げるために、一筆一筆の仕上がりに磨きをかけます。
Vol.85
2024年7月1日発行「人を結ぶ 地域と繋ぐ」をコンセプトに、長崎大学の思いや姿、描く未来などを共有し、
多くの皆様に長崎大学へ関心をお寄せいただけるような広報紙を目指します。