Research[研究]
本稿は2026年3月19日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。
研究の歩みと島が映し出す多様なスケール
私は長年、北海道大学で日本の国境や境界地域の研究を続けてきました。2011年に設立された「境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)」(代表・渋谷正昭東京都小笠原村村長、10の境界自治体が加盟)の事務局を担い、北は礼文島から南は与那国島まで、毎年、実務研究セミナーを組織してきました。24年6月にクロスアポイントメントで長崎大学に赴任した際も、周囲からは対馬や五島の研究のためと思われたようです。
ですから、私がグローバルリスク研究センター長だと言うと、怪訝(けげん)な顔をされました。島とグローバルがすぐに結びつかないからでしょう。島の一般的なイメージは「狭い」「孤立」「環海」でしょうか?いずれにせよ、島に共通する特徴はスケールの「小ささ」です。
とはいえ、島のスケールは実際にはかなり幅があります。例えば、北方領土の択捉島は3200平方㌔、国後島は1500平方㌔と沖縄本島より大きく、長崎では対馬島が700平方㌔、福江島が330平方㌔です。有人最西端の与那国島は28平方㌔、最南端の波照間島が13平方㌔。尖閣諸島は6平方㌔、竹島に至っては0・2平方㌔にすぎません。

日本の戦後における島の位置づけと政策的対応
戦後、わが国は島を本土と区別し、「小ささ」をベースに発展を考えてきました。民俗学者・宮本常一をはじめとする先人たちが離島振興法を作り、インフラ整備が進みました。奄美、小笠原、沖縄では、日本復帰後に振興や開発に関する特別措置法がそれぞれ制定されました。17年には、対馬、五島、上五島、壱岐を抱える長崎県が旗振り役となり、有人国境離島という枠組みで保全と地域社会の維持(振興)に関する特別措置法も整備されました。
島が映し出すローカルなグローバルリスク
私は島の「小ささ」にグローバルリスクの本質を見ています。グローバルリスクというと、気候変動、感染症などスケールの大きな事象が想定されますが、地球規模で全人類が一様に直面する危機などそう多くはありません。震災や津波の被害は特定の地域に集中し、パンデミック(世界的大流行)の拡大プロセスにも地域差が見られます。要は、リスクをグローバルに語る際にも、そのローカルな性格を見定め、そこに暮らす人々がこれとどう向き合うのかを議論する必要があるのです。
島は「小さい」からこそ、ヘルス、環境、災害、人口動態、紛争などのリスクが集中的に現れ、複合的に展開する場所だと思います。そうであれば、島はわが国の将来を見通すセンサーの役割を果たすでしょう。

長崎から始めるアイランドリスク研究の構想
こうした視点から、私は今後、島を多く抱える鹿児島や沖縄等とともに、長崎からアイランドリスク研究を立ち上げたいと考えています。特に「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J―PEAKS)」で連携する鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センターとの共同研究を楽しみにしてください。



