Research[研究]
本稿は2026年1月15日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。
観光産業の振興と発展を目指す経済学部PBL
長崎の離島の一つ、五島市は美しい自然、歴史文化資源、豊かな食といった魅力を持つ一方で、人口減少という深刻な課題を抱えています。1955年に約9.2万人だった人口は、2025年には約3.3万人まで減少し、2060年には約1.3万人になると予測されています。人口減少は生活関連サービスの縮小や担い手不足を通じ、地域の魅力や経済活動の低下を招きます。こうした悪循環を食い止めるため、五島市は観光産業を地域経済の中核と位置づけ、観光消費額や宿泊客数の拡大による産業振興と雇用創出を重要な目標としています。
その中で、長崎大学経済学部の2年生が五島市をフィールドに、観光産業の振興と持続的発展をテーマに学修しました。これは2年次開講科目「領域演習」といい、インタビュー調査等による一次データの収集と、他地域・企業の事例やベンチマーク調査を組み合わせ、地域や産業の課題に対する実践的な解決策を構想し、事業者に提案することを目的としたProject-Based Learning(課題解決型学習 以下、PBL)科目です。

観光産業を取り巻く現状と課題を知る
長崎県は多くの離島を抱えていますが、長崎大学の学生であっても、離島を実際に訪れ、地域産業の現場を体感する機会は限られています。そのような学生が五島市を訪れ、最初に観光協会、市役所、地元事業者から市の現状と将来像について話を伺い、観光資源の魅力と同時に、産業としての観光が抱える構造的課題に向き合いました。
その後、学生はグループごとに観光産業の発展可能性を多角的に考察し、提案を固めていきました。

観光産業の発展に向けた学生の着眼点
【チームcamellia】
学生旅行市場に着目し、価格と満足度の両立による新たな需要創出を目指した1泊2日の観光プランを提案しました。

【チーム漢】
知名度の低い伝統文化を観光コンテンツとして再構成することで、文化の継承と観光産業の高度化を同時に実現する可能性を示しました。
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【チームとんがりプラ〜ン】
廃校という地域資源に着目し、観光インフラの整備を通じた滞在型観光の促進を構想しました。

いずれも、観光を「点のイベント」ではなく、地域に継続的な価値をもたらす産業活動として捉えている点が特徴です。
フィールドワークで深まった産業理解
1泊2日のフィールドワークでは、市内各地を訪問し、インタビュー調査も行いました。学生は観光産業が地域の人々の思いや日常と密接に結びついていること、交通や生活利便性といった周辺条件が観光の持続性に大きく影響することを実感しました。こうした経験を通じ、観光産業の振興には、サービス設計だけでなく地域全体を視野に入れた総合的な視点が不可欠であることを学ぶことができました。



離島を学びのフィールドにする意義
成果報告会では、行政や地元事業者から専門的な視点でのフィードバックが寄せられ、学生は、自身の提案の課題に気づくと同時に、観光産業を担う現場の視点の重要性を実感しました。
離島地域は日本社会が今後直面する人口減少や産業構造転換を先行して経験しています。その現場で観光産業の振興と発展を考えるPBLは、学生にとって将来の日本経済や地域産業を自分事として捉える貴重な学びの機会となっています、また、離島の観光産業にとっても観光資源の再評価といった成果につなげることができ、その発展に刺激を与えています。
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研究者情報
長崎大学経済学部 教授
木村眞実
関連リンク
長崎大学経済学部(NEWS記事:フィールドワークの紹介)
長崎大学経済学部(経済学の踊り場:研究者の紹介)
五島市観光協会
株式会社山口ファーム
株式会社五島列島酒造
双日五島開発株式会社


