Research[研究]

第9回 AIなど活用 人材と学びの循環

研究 2025/12/18

本稿は2025年12月18日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿を再編集したものです。

未来の教育を考え、創造するセンター

 みなさんは、「未来の教育ってどうなるのだろう?」と考えたことはありますか。長崎大学には、「これからの教育」を研究し、実現していこうとする「未来教育創造センター」があります。過去を振り返り、未来を志向しながら、新しい教育を考え創造していくセンターです。

 ここでは、デジタル機器を駆使できる学校の先生グローバルな視点を持つ地域の若い担い手の育成を目指しています。今回は、未来を切り開く大学教育と学校教育の構築に挑む「長崎大学未来教育創造センター」を紹介します。

未来教育創造センター(長崎大学)

ICTやAIで広がる新しい学び

 長崎県は、古くから世界の新しい文化を吸収してきたところですが、離島やへき地が多く、近年は学校の数が減少し先生も不足するなど、学びの環境に課題を抱えるようになりました。未来教育創造センターは、そのような教育の課題にしっかりと向き合い、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を活用して、一人一人が自分らしく学べる環境づくりそれを支える人材の育成に取り組んでいます。それでは、ICTやAIを用いると、どのような新しい学びが期待できるでしょうか。

 たとえば、島々の離れた学校をICTでつなぐと、離れていても画面の向こうにいる他校の生徒と一緒に授業を受けたり、意見を交わしたりできるようになります。そこにAIの機能を加えると、授業中の話し合いの内容が多角的に分析され、その結果をもとに、一人一人が自らの興味や理解度に応じて自分のペースで学びを進められます。AIに自分の疑問を相談して学びを深めることもできます。

 このように、本センターはICTやAIを駆使して、集団で学び合う環境と個人で自ら学習する場を創り出し、それを活用できる先生や人材の育成に取り組んでいます。また、それらの人々を手助けできるデジタル技術の開発にも力を注いでいます。

地域とつながる探究学習

 さらに私たちは、「探究学習」を体系的に構築することも推進していきます。探究学習は、自ら問いを立てて調べ、考え、(仲間と協力して)答えを探し出していく学び方です。16世紀から港を開いて世界に目を向けた長崎には、朝鮮通信使や唐通事・蘭通詞による交流やキリシタン文化の流入はもちろんのこと、平和学習・平和教育など、世界に類を見ない多彩な歴史・文化遺産があります。

 それらをデジタル技術と組み合わせ、大学や学校の授業と地域・離島の文化施設の活動を結んで、より深く、さらに広い視点で地域や離島を学び直す取り組みを進めていきます。中高生のみなさんが学校で見つけた課題を長崎大学入学後も続けて探究できるような「学びの連続性」を創り出し、学校での学びを大学生になってもしっかりと発展できるような仕組みづくりを進めていこうと考えています。

学びがつながり、循環していく未来へ

 将来、長崎大学で学んだ学生が教員や地域社会をリードする人材となり、その指導を受けた中高生のみなさんが本学に入学することで人材と学びの循環が生まれ、その循環が持続していくことになれば、すばらしいことではないでしょうか。

研究者情報

長崎大学未来教育創造センター長

松元 浩一

関連リンク

長崎大学未来教育創造センター