Research[研究]

第6回 「新たな工業教育」始まる

研究 2024/09/19

本稿は2024年9月19日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿(長崎工業高等学校)を再編集したものです。

長崎県の工業高校で始まる半導体教育

 長崎県の工業高では、多くの生徒が県内の半導体関連企業を始めとする多くの企業へ就職しています。今後はさらに企業からの需要が加速すると思われることから、これからの半導体産業を担う人材育成を推進するため、工業高では「半導体製造技術」という授業を新たに開始しました。
 2024年度から長崎工業高の工業化学科で、25年度からは大村工業高の化学工学科でも始めます。授業をより充実したものとするために、半導体関連企業から講師を招く出前授業も実施しています。半導体の基礎から応用例、製造方法までを総合的に学習することで、半導体への興味・関心を高め、志を高く持ち、将来この分野を支えるリーダーとなる生徒を育成したいと考えています。

5月17日 長崎工業高校における出前授業

半導体を軸に長崎大学との連携を強化

 そして、工業高と大学との連携を強化するため、本年度「長崎大学工学部・工学研究科、情報データ科学部と長崎県立高等学校工業科との連携に関する協定」を締結しました。
 この協定の下、早速今年から長崎大のオープンキャンパスやオープンラボで工業高校生対象の説明会を開催していただき、多くの生徒が参加しました。また工業高の教職員に対しても、長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター(CAMRIS)の協力の下、半導体への理解を一層深める研修を今年12月に実施する予定です。

2月20日 長崎県立高校工業科の先生方がCAMRISを訪問(関連記事

時代の要請に応えて変化する工業高校

 県立工業高は、県内の工業技術者の育成のために設立され、現在、五つの工業高(長崎・佐世保・鹿町・島原・大村)と工業科のある上五島高の計6校で全日制、定時制合わせて32学科33クラスが設置されています。
 工業高では「資格取得」「ものづくり」「多様な進路」「県内就職支援」の4つを柱として、社会で活躍できる技術者の育成を目指して学校教育を行っています。各専門学科は時代の要請に応じてさまざまな創意工夫をしながら工業教育に取り組んできました。今回の「半導体製造技術」の科目の新設や大学との連携も新たな取り組みです。


 県内の工業高では話し合いを重ね、「今後の未来を担う工業高校生」を考え、22年度に以下の提言を行いました。
①自ら課題を発見し、創造的に解決しようとする
②新しいものをつくり出す能力を有する
③超スマート社会(Society5.0)に対応し、次代を創造する
④グローバル・コミュニケ―ション力を有する
⑤地域の産業を知り・担い・発展させる―。
この五つを、これまで続けてきた「資格取得」「ものづくり」「多様な進路」「県内就職支援」への取り組みとともにリニューアルしながら、引き続き力を入れ、さらに進めていきます。


 実現に向けては、多くの外部機関との連携を深め、生徒により良い工業教育の機会を与えられる取り組みを推進していきたいと考えています。特に大学との連携では、高校での新たな半導体教育の進化と主体的に学ぶ生徒の育成が達成できるものと考えてます。

 

執筆者情報

長崎県立長崎工業高等学校 校長

北島 弘明(きたじま ひろあき)

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