Feature[特集]

海を守るプランクトンに魅せられて

特集 2023/04/17

 韓国・釜山出身の金禧珍准教授は、海に囲まれた環境で育ちました。大好きな海や、その生態系を支える動物プランクトンの魅力に気付いてからは、たくさんの論文を読み、勉強に励んだそうです。
「動物プランクトンは、海中の物質循環やエネルギーの流れに影響を与えるだけでなく、多くの幼生生物の餌となる役割を果たしています。肉眼は見えにくい小さな生物なのに、まさに身をていして海を育む、母のようなたくましさに魅力を感じます」。

マイクロプラスチックを与えた動物プランクトンを顕微鏡で観察。マイクロプラスチックが緑色に光ることによって、体内のどの部分に蓄積されているのかが分かります。「粒径や濃度によりますが、ほとんどは排出されます。しかし、暴露時閤が長くなると蓄積されて、その影響が出てきます」と金先生。

動物プランクトンを対象とした研究とは、具体的にどのようなテーマですか?

「いくつかありますが、例えば、増養殖現場では動物プランクトンが仔魚を育てるための餌料として使われており、効率的に量産できる方法を探っています。既存の方法では、動物プランクトンの餌となる植物プランクトンの培養に時間がかかったり購入単価が高かったりして経費がかさむため、代替となる再生飼料にゃ着目しています。他には、温暖化や海洋酸性化、マイクロプラスチックといった環境問題が動物プランクトンに及ぼす影響についても研究しています。研究室ではプランクトンのストック培養を行い、さまざまな実験に活用しています。小さいのでスペースを取らず異なる実験を同時進行できますし、寿命が短いため親と子の次世代にわたる観察を短期間でできるなど、メリットがたくさんあるんですよ。プランクトンは本当に優秀なんです!」。
 授業など折に触れて、自然界におけるプランクトンの役割を発信している金先生。

授業を行う上で大切にしているのはどんなことですか?

「学生とはコミュニケーションを取りたいと思っているのですが、一方的に発信するだけでは難しいので、終盤にクイズを取り入れるようにしています。専用のWebサイトに出題し、学生はパソコンやスマートフォンで回答するという方法です。授業をきちんと理解できているかの確認や復習になりますし、楽しみながら集中してくれます。これからも続けていきたいです」。
 他にも、一年次の教科科目にグループワークを取り入れるなど、工夫を凝らした授業を展開しているそうです。

研究室に在籍する学生とは和やかな雰囲気。学生が編み出した解釈に耳を傾け、
実験方法をアドバイスするなど、コミュニケーションを大切にしています。
金 禧珍 准教授 / KIM Hee-Jin

韓国・釜山出身。韓国釜慶大学卒業。韓国国立水産科学院インターン研究員勤務。その後、長崎大学大学院生産科学研究科海洋生産科学専攻修了。博士(水産学)。長崎大学水産学部ポスドク研究員を経て、2018年に長崎大学に着任。同年より現職。

担当講義

海洋環境科学概論(水産1年)/海洋環境科学実験Ⅱ(水産2年)/生物環境学(水産3年)
海のミクロ生物(教養教育1年)他

金先生より一言

授業や研究を通じて、動物プランクトンの魅力が多くの人に伝われば、環境保全にもつながるはず。
外国の学生から、共に学びたいという声も届いています。