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第7回 「学学連携」でトップ人材増やす

研究 2024/10/17

本稿は2024年10月17日(木)長崎新聞掲載の寄稿原稿(佐世保工業高等専門学校)を再編集したものです。

多様な学問分野からなる半導体

 今年の6月に米国の半導体メーカー・NVIDIA(エヌビディア)の時価総額が世界1位となったことが話題になりました。AIやIoT、ロボット分野に必要不可欠な半導体技術は、近年目覚ましい成長を遂げています。半導体に関する技術は国の経済安全保障に直結する重要な基盤であり、半導体分野の人材育成は喫緊の課題となっています。今後ますますその需要が高まると予想され、即戦力となりうる人材の育成が急務です。

 半導体産業は裾野が広く、基礎となる学問分野も多様です。材料である金属シリコンから半導体チップを作るまでの産業では化学や材料、機械、電気系の学問が関係します。さらに、半導体チップをさまざまな機器に応用する産業では、電子、情報、建築など幅広いビジネスにつながる多くの学問分野が関係します。一見、半導体と関係なさそうな勉強でも、実は半導体を作る際や使う際に関係している場合が多くあります。半導体はとても身近なものなのです。

全国の高専に先駆けて人材育成を開始

 このような幅広い分野から構成される半導体の人材を育成するために、全国51校の国立高専を設置・運営する国立高専機構は、人材育成プログラム「COMPASS 5.0」を立ち上げ、次世代の基盤技術の人材育成に注力しています。半導体分野では、佐世保高専が熊本高専と共に高専における拠点校として、未来の半導体人材を育成するための取り組みを行っています。

 この事業をスタートした2022年の4月に佐世保高専では二つの講義を新設しました。前期は半導体を知ることに特化した「半導体工学概論」、後期は半導体を作ることに特化した「半導体デバイス工学」です。毎年4年生160人のうち、およそ半数が受講をしており、選択科目の中で最も受講生の多い科目となっています。希望者が多い理由としては、企業技術者や大学教員の講義を受けられること、企業や研究施設の見学をできることなどが挙げられます。

 現在、佐世保高専で行っている人材育成はボリュームゾーン人材と呼ばれる実践的な即戦力となる人材の育成が中心となっています。人材の需要が高まる中でボリュームゾーン人材の育成は重要であると考えていますが、一方で、高度な最新技術の研究開発に対応できるトップ人材の育成も重要です。

強い「学学連携」でトップ人材を育てる

 このトップ人材を育成する上では「学学連携」、つまり大学との連携が不可欠です。佐世保高専は半導体のトップ人材を育成するために、長崎大学との学学連携をこれまで以上に深めたいと考えています。まずは教員間の相互交流を進め、共同で行える研究の可能性を探っています。

 研究活動は学生と一緒にやっていきますので、佐世保高専で半導体関係の研究をした学生が長崎大学の大学院へ進学し、より高度な内容で研究活動を継続できる形を増やしたいと思っています。

 長崎で若い人材が活躍できる場をつくるため、長崎における工業高、高専、大学の連携を深め、半導体分野のみならず、長崎の産業の発展に寄与する強い「学学連携」を構築していきます

 

執筆者情報

佐世保工業高等専門学校

COMPASS5.0半導体人材育成事業・拠点校リーダー

物質工学科・教授

城野 祐生(じょうの ゆうき)

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